福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第18主日 (2016/7/31 ルカ12章13-21節)  

教会暦と聖書の流れ


 きょうの箇所も、ルカ福音書の「エルサレムへの旅の段落」(ルカ9章51節~19章44節)の中の箇所です。この旅は十字架を経て神のもとに至る旅ですが、この中でルカ福音書は神の国について語るイエスの多くの言葉を伝えています。
 先週の箇所からは少し飛んでいますが、その間(ルカ11章14節~12章12節)にある話の多くは、マタイやマルコと共通するので、他の年に読まれています。きょうの話はルカ福音書だけが伝えている話です。


福音のヒント


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  (1) 「ラビ(先生)」と呼ばれるユダヤ人たちの宗教指導者は、宗教的な教えだけでなく、実際の人々の生活の中での相談に乗ったり、もめごとの裁定にもかかわったようです。遺産分配のことでイエスに訴えた人は、そのようなラビの1人としてイエスを見ていたのでしょう。イエスの言葉の内容についてはほとんど何も説明する必要がないでしょう。できるだけ素直にイエスの語りかけを、問いかけを、呼びかけを聞けばよいのです。たぶん、そこには今のわたしたちの生き方への強烈なチャレンジが感じられるでしょう。わたしたちの多くにとって、「お金」の問題や、人と人とのトラブルの問題は切実だからです。

  (2) 富を蓄えることへの警告という点では、申命記の次の言葉が思い出されます。
「あなたが食べて満足し、立派な家を建てて住み、牛や羊が殖(ふ)え、銀や金が増し、財産が豊かになって、心おごり、あなたの神、主を忘れることのないようにしなさい。主はあなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出し、炎の蛇とさそりのいる、水のない 乾いた、広くて恐ろしい荒れ野を行かせ、硬い岩から水を湧き出させ、あなたの先祖が味わったことのないマナを荒れ野で食べさせてくださった。それは、あなたを苦しめて試し、ついには幸福にするためであった。あなたは、『自分の力と手の働きで、この富を築いた』などと考えてはならない。むしろ、あなたの神、主を思い起こしなさい。富を築く力をあなたに与えられたのは主であり、主が先祖に誓われた契約を果たして、今日のようにしてくださったのである。」(申命記8章13-18節)
 紀元前13世紀、神によってエジプトの奴隷状態から救い出されたイスラエルの民は、40年の荒れ野の旅を経て、約束の地を目の前にしたヨルダン川東岸にたどり着きました。申命記の中心部分は、指導者であるモーセがそこにあるネボ山の山頂に立ち、約束の地を見渡しながら語る説教です。モーセは民に40年の荒れ野の旅を思い起こさせ、その意味を解き明かし、約束の地に入ってからどう生きるべきかを語ります。そこにある一つの危険が「富を蓄えること」でした。荒れ野では、毎日ぎりぎりの食べ物しかなかった。でもだからこそ一日一日神によって養われていることを感じないわけにはいかなかった。しかし、富や作物を蓄えると「主を忘れる」というのです。
 わたしたちの中にも、本当に苦しいとき、どん底の中でこそ神に支えられたという体験があるかもしれません。そしてそれをいつの間にか忘れているのかもしれません。

  (3) 自分の力でなんとかしよう、人間の力ですべてをうまくやっていこう、とわたしたち現代人は考えます。そのためには、やはりお金が必要だ、ということにもなります。確かにこの世界の中では、金持ちのほうが高度な医療を受けられるし、発展途上国の人には充分な医療が行き届かない、というような現実があります。まさに「人の命は財産によってどうすることもできる」、というような世界もあるのです!
 しかし、もし人間の力やお金の力ですべてがなんとかなると感じているならば、おそらく「神は不要」になるでしょう。人間の無力さや限界を知るということはそういう意味で大切なことです。おそらく、人間にとってもっとも顕著に「無力さ・限界」を感じるのは、死に直面したときです。そして「今夜、お前の命は取り上げられる」・・・いつ自分の死が訪れるか、本当はだれも知らないのです。その時、富は頼りにならない、本当に問われるのは「神の前に豊かになる」ということなのだ、とイエスは語ります。

  (4) 末期ガンの人々のケア(ターミナル・ケア)の中で「生命の質(quality of life)」ということがよく語られるようになりました。迫り来る死を前にしたときに、いのちの「量(長さ)」ではなく、「質(残された時間をどのように充実して生きるか)」が問われるのです。
 「趣味の世界に生きる」とか「大自然の美に触れる」など、人生を豊かにするものはいろいろあります。しかし、突き詰めて言えば、人間を超えたもの・目に見えないものとのつながりを生きること、そして、人と人との愛のつながりを生きることこそが、本当に豊かないのちを生きることであり、そのいのちは肉体の死をも越えるものである、とわたしたちキリスト者は信じています。自分の肉体の中にある孤立した生命のイメージではなく、神とのつながりの中にあるいのち、人との間の愛の交わりの中にあるいのちを感じること、それを「スピリチュアルspiritualな感覚」と言うこともできます。
 イエスご自身が、十字架の死に向かう中で、そのような「いのちの質」を極限まで生き抜かれました。「神の前に豊かになる」いのちとは、イエスの十字架の中にあるいのちだと言ったらいいのかもしれません。

  (5) きょうの箇所の発端は「兄弟との間のもめごと」でした。わたしたちの周囲にもよくある問題でしょう。しかし、ぎりぎりのところで問われるのは、損得ではなく、その人と共に生きることを喜べるかどうかということではないでしょうか。死を前にして、家族や友人との和解を望んだ人、そして実際に和解することのできた人の姿は感動的です。逆に、その和解を妨げるものが「貪欲」だと言っても良いのではないでしょうか。
 わたしたち一人一人の中に、おそらく両方の面があります。
 わたしの中にある「貪欲」とはどんなものでしょうか。
 わたしの中にある「神の前での豊かさ」とはどんなものでしょうか。





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聖書朗読箇所

第一朗読 コヘレト1・2、2・21-33


 1・2コヘレトは言う。
 なんという空しさ
 なんという空しさ、すべては空しい。
 2・21知恵と知識と才能を尽くして労苦した結果を、まったく労苦しなかった者に遺産として与えなければならないのか。これまた空しく大いに不幸なことだ。22まことに、人間が太陽の下で心の苦しみに耐え、労苦してみても何になろう。23一生、人の務めは痛みと悩み。夜も心は休まらない。これまた、実に空しいことだ。


第二朗読 コロサイ3・1-5、9-11


 1〔皆さん、〕あなたがたは、キリストと共に復活させられたのですから、上にあるものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右の座に着いておられます。2上にあるものに心を留め、地上のものに心を引かれないようにしなさい。3あなたがたは死んだのであって、あなたがたの命は、キリストと共に神の内に隠されているのです。4あなたがたの命であるキリストが現れるとき、あなたがたも、キリストと共に栄光に包まれて現れるでしょう。
 5だから、地上的なもの、すなわち、みだらな行い、不潔な行い、情欲、悪い欲望、および貪欲を捨て去りなさい。貪欲は偶像礼拝にほかならない。
 9互いにうそをついてはなりません。古い人をその行いと共に脱ぎ捨て、10造り主の姿に倣う新しい人を身に着け、日々新たにされて、真の知識に達するのです。11そこには、もはや、ギリシア人とユダヤ人、割礼を受けた者と受けていない者、未開人、スキタイ人、奴隷、自由な身分の者の区別はありません。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにおられるのです。


福音朗読 ルカ12・13-21


13〔そのとき、〕群衆の一人が言った。「先生、わたしにも遺産を分けてくれるように兄弟に言ってください。」14イエスはその人に言われた。「だれがわたしを、あなたがたの裁判官や調停人に任命したのか。」15そして、一同に言われた。「どんな貪欲にも注意を払い、用心しなさい。有り余るほど物を持っていても、人の命は財産によってどうすることもできないからである。」16それから、イエスはたとえを話された。「ある金持ちの畑が豊作だった。17金持ちは、『どうしよう。作物をしまっておく場所がない』と思い巡らしたが、18やがて言った。『こうしよう。倉を壊して、もっと大きいのを建て、そこに穀物や財産をみなしまい、19こう自分に言ってやるのだ。「さあ、これから先何年も生きて行くだけの蓄えができたぞ。ひと休みして、食べたり飲んだりして楽しめ」と。』20しかし神は、『愚かな者よ、今夜、お前の命は取り上げられる。お前が用意した物は、いったいだれのものになるのか』と言われた。21自分のために富を積んでも、神の前に豊かにならない者はこのとおりだ。」



Posted on 2016/07/22 Fri. 15:28 [edit]

category: 2016年(主日C年)

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