福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第8主日 (2017/2/26 マタイ6章24-34節)  


教会暦と聖書の流れ



 主日のミサの聖書朗読配分は3年周期になっていて、今年はA・B・C年のうちA年にあたります。A年年間第4~第9主日のミサの福音で、マタイ5~7章の「山上の説教」が読まれることになっていますが、実は年間主日の流れは、四旬節・復活節で中断され、さらに三位一体の主日やキリストの聖体の祭日と重なるため、このあたりの年間主日は祝われることのない年も多いのです。復活祭の日付は年によって異なります。今年は比較的、復活祭が遅いので、年間第8主日まで祝うことができます。



福音のヒント



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  (1)  先週の箇所はマタイ5章48節まででしたので、その後、きょうの箇所まで少し飛んでいます。6章1-6,16-18節は「施し、祈り、断食」についての教えで、毎年灰の水曜日のミサで読まれる箇所です。9-13節には祈りの代表として「主の祈り」が伝えられています。この「施し、祈り、断食」についての教えは、6章1節「見てもらおうとして、人の前で善行をしないように注意しなさい」という言葉から始まっています。それらの善行を熱心に行うようにと勧めるのではなく、むしろ、それらの行いをするときに心がどこを向いているかを問いかけるのです。そしてその結論のように、「地上に富を積んではならない。・・・富は、天に積みなさい」(6章19-20節)という教えが続きます。自分を誇るためではなく、神に対して、人に対して、まごころをもって行う行為が天に富を積むことになるということでしょう。
 ここにも山上の説教の教えの特徴、すなわち「神が人間に求めていることを愛という一点に集中させる」、「神への信頼のうちに神のみ旨を果たす」という特徴が見られます。

  (2) 24節「だれも、二人の主人に仕えることはできない・・・」は、ルカ16章13節にほとんど同じ言葉があります。ルカの文脈では、「富」に対する態度についてのさまざまな教えの中にこの言葉が置かれています。マタイでは「富は、天に積みなさい」(6章20節)という教えの後にこの言葉があり、その結論のようになっています。つまり、地上に富を積むことと天に富を積むことが両立しないように、神に仕えることと、富に仕えることは両立しないのです。なお、「富」と訳された言葉は「マモン」ですが、これはアラム語で「富」を表す言葉です。ギリシア語で書かれた新約聖書の中で、この言葉がアラム語のまま記されているのは、「マモン=富」を神に対立する存在として、擬人的に考えているからです。なお、ここでは「神と富とに仕えてはならない」ではなく、「仕えることはできない」と言われています。それは禁止命令ではなく、事実としてそうなのだということです。

  (3) 25-33節「空の鳥、野の花」の話は、ルカ12章22-31節に平行箇所があります。内容はよく似ています。しかしここでも文脈が違います。ルカでは「自分のために富を積んでも、神の前に豊かにならない者」(12章21節)に対する警告に続いていて、結論としては「ただ、神の国を求めなさい」「富を天に積みなさい」「あなたがたの富のあるところに、あなたがたの心もあるのだ」(ルカ12章31、33、34節)となっていきます。つまり、ルカでは、地上の富(金銭)のことを心配するよりも、もっと大切な神の国や天のことに心を向けなさい、という教えになっています。「あなたがたの父は喜んで神の国をくださる」(32節)の「神の国」は、終末的な救いの意味合いが強いと言えるでしょう。
 一方マタイでは、最後に「だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(34節)という結論のような言葉が続いています。今日わたしたちに必要なものすべてを与え、わたしたちを生かしてくださる神への信頼を求める教えだと言えるでしょう。ですから「神の国と神の義を求めなさい」という言葉も、終末的な意味というよりも、「今、神のみ心にかなう生き方をするように」という勧告の意味だと考えられます。

  (4) いろいろ解説してきましたが、きょうの箇所はそれほど説明が必要な箇所でもないでしょう。素直にイエスの言葉を受け取ればよいのです。しかし、このように言われても、わたしたちがなかなか「思い悩み」から解放されないのも事実ではないでしょうか。この「思い悩み」はイエスの時代よりも、現代のほうが大きな問題かもしれません。
 現代は人間の力が非常に大きくなった時代であり、現代人はすべてを自分の力で行うことができるかのように錯覚しがちです。そして成功するのは自分の努力の結果で、うまくいかないのは自分の怠慢の結果(「自己責任」!)だというような考えが強くあります。そんな中では、神がすべてを与え、養っていてくださるとはなかなか感じにくいでしょう。
 また、最近は特に、多くの人々の間に将来に対する不安が広がっているようです。少子高齢化や経済的な行き詰まりという日本の現実は、将来を悲観的に思い浮かべざるをえないところに、人を追い込んでいます。「明日のことは分からないから、明日を思い悩んでもしかたない」というのが福音の教えであっても、「明日のことが分からないから、不安でならない」というのが現実の多くの人々の叫びなのです。
 
  (5) イエスは、「空の鳥をよく見なさい」「野の花がどのように育つのか、注意して見なさい」と語りかけます。どうしたら思い悩みから解放されるのか、と考え、自分の中で堂々巡りして、さらに思い悩み続けるという悪循環に陥りそうになったなら、思い切ってこのイエスの言葉に従い、自然の中でいのちの営みに目を向け、この福音のイメージの中に自分を置いてみてはどうでしょうか。そうすると、人間を超えた大きな力が自分を包んでいることを少しずつ感じ始めることができるのではないでしょうか。わたしたちは、自分の力で思い悩みから解放されるのではありません。わたしたちを思い悩みから解放してくださるのは神なのです。きょうを神に生かされた者として精一杯生きる。ここに信仰に生きることの本当の醍醐味があります。





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聖書朗読箇所


第一朗読 イザヤ49・14-15


14シオンは言う。主はわたしを見捨てられた
わたしの主はわたしを忘れられた、と。
15女が自分の乳飲み子を忘れるであろうか。
母親が自分の産んだ子を憐れまないであろうか。
たとえ、女たちが忘れようとも
わたしがあなたを忘れることは決してない。


第二朗読 一コリント4・1-5


 1〔皆さん、〕人はわたしたちをキリストに仕える者、神の秘められた計画をゆだねられた管理者と考えるべきです。2この場合、管理者に要求されるのは忠実であることです。3わたしにとっては、あなたがたから裁かれようと、人間の法廷で裁かれようと、少しも問題ではありません。わたしは、自分で自分を裁くことすらしません。 4自分には何もやましいところはないが、それでわたしが義とされているわけではありません。わたしを裁くのは主なのです。5ですから、主が来られるまでは、先走って何も裁いてはいけません。主は闇の中に隠されている秘密を明るみに出し、人の心の企てをも明らかにされます。そのとき、おのおのは神からおほめにあずかります。


福音朗読 マタイ6・24-34


 〔そのとき、イエスは弟子たちに言われた。〕24「だれも、二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方に親しんで他方を軽んじるか、どちらかである。あなたがたは、神と富とに仕えることはできない。」
 25「だから、言っておく。自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。26空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。27あなたがたのうちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。28なぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。29しかし、言っておく。栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。30今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなたがたにはなおさらのことではないか、信仰の薄い者たちよ。31だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着ようか』と言って、思い悩むな。32それはみな、異邦人が切に求めているものだ。あなたがたの天の父は、これらのものがみなあなたがたに必要なことをご存じである。33何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる。34だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」


Posted on 2017/02/17 Fri. 16:19 [edit]

category: 2017年(主日A年)

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