福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第24主日 (2017/9/17 マタイ18章21-35節)  


教会暦と聖書の流れ


  マタイ18章には教会共同体についての教えがまとめられていますが、きょうの箇所はその結びの箇所です。このたとえ話は、主の祈りの中の「わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします」という祈りの解説のようなたとえ話だと言えます。


福音のヒント


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  (1) 「7」という数は「完全さ」を表す数だと言われます。「7の70倍」は「490回まで」という意味ではなく「無限に」という意味です。1タラントンは1デナリオン(1日の日当)の6000倍にあたると言われます。つまり、この家来の主人に対する負債(1万タラントン)は、自分が仲間に貸したお金(100デナリオン)の60万倍ということになります。非常識な額ですが、これは神のゆるしのはかりしれない大きさを表わしています。なお、イエスはペトロに対して無限のゆるしを求めていますが、たとえ話の中では1回しかゆるされません。21-22節と23節以下は本来別の伝承だったのでしょう。
 ここで「主君」と訳されている言葉はギリシア語では「キュリオスkyrios」で、普通は「主・主人」と訳される言葉です。「家来」のほうは「ドゥーロスdulos」で、普通は「奴隷・しもべ」と訳されます。この主君と家来の関係が、神と人との関係のたとえであることは明白です。たとえ話の内容そのものも特別な説明を必要としないでしょう。

  (2)  23節からのたとえでは罪のゆるしが「借金の帳消し、負債の免除」のイメージで語られています。主の祈りの中の「わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします」(聖公会・カトリック共通訳)も、新共同訳聖書では「わたしたちの負い目を赦してください、わたしたちも自分に負い目のある人を赦しましたように」(マタイ6章12節)となっています。この「負い目」は「負債」を意味する言葉です。ルカ7章41-42節にはこういうたとえもあります。「ある金貸しから、二人の人が金を借りていた。一人は五百デナリオン、もう一人は五十デナリオンである。二人には返す金がなかったので、金貸しは両方の借金を帳消しにしてやった。二人のうち、どちらが多くその金貸しを愛するだろうか」 これも明らかに罪のゆるしのたとえです。人は確かに罪を「負債」のように感じることがあります。だから何とか返済(埋め合わせ)しなければと思いますが、実は「罪」という借金を返済することはできません。また、罪を犯したという事実は永遠に消えることがないのです
 それでも神はゆるすのです。なかったこと(帳消し)にしてしまうというのです。なぜでしょうか。ルカ7章のたとえでは「返す金がなかったので」借金を帳消しにしたとあります。マタイ18章でも返すことのできない家来を「主君は憐れに思って」ゆるします。

  (3) 罪を犯した人間というのは、いわば「借金で首が回らない状態」です。どうにも行き詰まってしまい、生きることができなくなった人間を、それでも生かそうとすること、これが借金の免除のたとえで語られる罪のゆるしです。現実の社会の中にある「倒産しそうな会社のための債権放棄」や「過大な債務に苦しむ貧しい国のための債務帳消し」も、同じように「その企業や国を生き残らせるため」というのがその理由です。神は人間が罪のために滅んでしまうのが惜しいのです。「あわれに思って」はギリシア語では「スプランクニゾマイsplanknizomai」で、目の前の人の苦しみを見て、自分のはらわたがゆさぶられるという、深い共感compassionを表す言葉です(C年年間第15主日の「福音のヒント」参照)。なぜ神が人の罪をゆるすのか、その答えはここにあります。
罪のゆるしが「借金の帳消し、負債の免除」のたとえで語られる理由はおそらく、ゆるしが相手を生かすことであることと、ゆるされる喜びの大きさを強調するためでしょう。

  (4) 「どうしてもあの人だけはゆるせない」「ゆるしてはいけないことだってあるはずだ」という思いを抱くことがわたしたちにはあります。悪いことをした人が反省も謝罪もせず、のうのうと生きているように感じるとき、特に強くそう感じるでしょう。これは当然のことです。きょうのたとえで「ゆるし」とは一方的に借金を帳消しにしてやるという以前に、その人の罪の痛みへの共感から相手を生かそうとすることでした。そして、ゆるされた人が仲間をゆるさなかったのは、彼がゆるされた事実だけを受け取り、ゆるしてくれた主君の心を受け取らなかったからだとも言えるでしょう。「どうしてもゆるせない」という現実の中で、それでも神のゆるしの心を受け取って生きようとするとき、わたしたちにできることは何でしょうか。

  (5) 「主の祈り」(マタイ6章9-13節)の聖公会・カトリック共通訳では「わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします」となっていますが、上で見た新共同訳の「赦しました」はギリシア語の完了形の訳、「ように」は「ホースhos」という接続詞の訳で、新共同訳のほうが直訳といえます。この祈りは2つの意味で受け取ることができます。「わたしたちはもう人の罪をゆるしていますから、わたしたちの罪をゆるしてください」が一つ。もう一つは「わたしたちの罪をゆるしてください。そうすればわたしたちも人をゆるしますから」(ルカ11章4節参照)です。聖公会・カトリック共通訳は、両方の意味をどちらも排除しないために、あえて前半と後半をつなぐ接続詞「ホース(ように)」を訳さず、「わたしたちも」の「も」によって前半との結びつきを示そうとしているようです(結果的に「わたしたちも人をゆるします」が独立した文章になって宣言のように聞こえてしまう、という批判もありますが)。
 実際にはきょうの福音のたとえ話のように、①先に神のゆるしがあり、②だから人は人をゆるすべきであり、③人が人をゆるさなければ神のゆるしは無意味になってしまう、ということでしょう。わたしたちはどのような思いで、この祈りを唱えているでしょうか。




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聖書朗読箇所

第一朗読 シラ27・30-28・7


27・30憤りと怒り、これはひどく忌まわしい。
罪人にはこの両方が付きまとう。
28・1復讐する者は、主から復讐を受ける。
主はその罪を決して忘れることはない。
2隣人から受けた不正を赦せ。そうすれば、
願い求めるとき、お前の罪は赦される。
3人が互いに怒りを抱き合っていながら、
どうして主からいやしを期待できようか。
4自分と同じ人間に憐れみをかけずにいて、
どうして自分の罪の赦しを願いえようか。
5弱い人間にすぎない者が、憤りを抱き続けるならば、
いったいだれが彼の罪を赦すことができようか。
6自分の最期に心を致し、敵意を捨てよ。
滅びゆく定めと死とを思い、掟を守れ。
7掟を忘れず、隣人に対して怒りを抱くな。
いと高き方の契約を忘れず、他人のおちどには寛容であれ。


第二朗読 ローマ14・7-9


 〔皆さん、〕7わたしたちの中には、だれ一人自分のために生きる人はなく、だれ一人自分のために死ぬ人もいません。8わたしたちは、生きるとすれば主のために生き、死ぬとすれば主のために死ぬのです。従って、生きるにしても、死ぬにしても、わたしたちは主のものです。9キリストが死に、そして生きたのは、死んだ人にも生きている人にも主となられるためです。


福音朗読 マタイ18・21-35


 21そのとき、ペトロがイエスのところに来て言った。「主よ、兄弟がわたしに対して罪を犯したなら、何回赦すべきでしょうか。七回までですか。22イエスは言われた。「あなたに言っておく。七回どころか七の七十倍までも赦しなさい。23そこで、天の国は次のようにたとえられる。ある王が、家来たちに貸した金の決済をしようとした。 24決済し始めたところ、一万タラントン借金している家来が、王の前に連れて来られた。25しかし、返済できなかったので、主君はこの家来に、自分も妻も子も、また持ち物も全部売って返済するように命じた。 26家来はひれ伏し、『どうか待ってください。きっと全部お返しします』としきりに願った。27その家来の主君は憐れに思って、彼を赦し、その借金を帳消しにしてやった。28ところが、この家来は外に出て、自分に百デナリオンの借金をしている仲間に出会うと、捕まえて首を絞め、『借金を返せ』と言った。29仲間はひれ伏して、『どうか待ってくれ。返すから』としきりに頼んだ。30しかし、承知せず、その仲間を引っぱって行き、借金を返すまでと牢に入れた。31仲間たちは、事の次第を見て非常に心を痛め、主君の前に出て事件を残らず告げた。32そこで、主君はその家来を呼びつけて言った。『不届きな家来だ。お前が頼んだから、借金を全部帳消しにしてやったのだ。33わたしがお前を憐れんでやったように、お前も自分の仲間を憐れんでやるべきではなかったか。』34そして、主君は怒って、借金をすっかり返済するまでと、家来を牢役人に引き渡した。35あなたがたの一人一人が、心から兄弟を赦さないなら、わたしの天の父もあなたがたに同じようになさるであろう。」

Posted on 2017/09/08 Fri. 09:46 [edit]

category: 2017年(主日A年)

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