福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第25主日(2017/9/24 マタイ20章1-16節)  


教会暦と聖書の流れ


 このぶどう園の労働者のたとえ話はマタイ福音書だけが伝えるものです。この箇所の直前19章30節と結びの20章16節には、「先の者は後になり、後の者は先になる」という同じ言葉があり、これがこのたとえ話のテーマを示す枠のようになっています。


福音のヒント


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  (1) マタイ19章27節で、ペトロはイエスに向かってこう言いました。「このとおり、わたしたちは何もかも捨ててあなたに従って参りました。では、わたしたちは何をいただけるのでしょうか」。これに対してイエスは弟子たちに大きな報いを約束しますが、同時に語られるのが30節の「しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる」という言葉です。そこから考えると、今日の福音のたとえ話は弟子たちの間の問題(最初からよく働いた弟子とそうでない弟子の話)に聞こえますし、マタイ福音書がそういう意味でこの話を伝えているのも事実でしょう。
 ただし、イエスがたとえ話を語った本来の状況は必ずしも福音書どおりとは言えません(A年年間第15主日の「福音のヒント」参照)。本来は、ファリサイ派の人や律法学者に向けて語ったと考えることもできるでしょう。だとすれば「自分たちは神に忠実に生きてきた」と考えるファリサイ派は朝早くから働いた人で、イエスのメッセージを聞いて回心した徴税人や娼婦、病人や貧しい人が最後の一時間しか働かなかった人ということになります。

  (2) 多くの人はこのたとえ話を読むと、主人のやり方は不正だ、と感じるのではないでしょうか。残業手当のつかない長時間労働や不当な賃金格差というような問題がこの社会にはありますが、労働に対してはそれに見合う正当な賃金が支払われるべきです。その観点からすれば、この主人のやり方は確かに不当だと言わざるをえないでしょう。
 しかし、現実の社会の中にもそれとは違う面もあります。たとえば、企業の都合で正社員が減らされ、非正規雇用が増えているというような現実。その中で短時間しか働けず、低賃金に甘んじている人も大勢います。いろいろな事情でまったく仕事のない人もいます。「だれも雇ってくれないのです」(7節)という叫びは、わたしたちの身近にもあるのではないでしょうか。マザーテレサは「現代の最大の不幸は、病気や貧しさではなく、いらない人扱いされること、自分はだれからも必要とされていないと感じることだ」と言いました。「だれも雇ってくれない、だれからも必要とされていなかった」という人の立場からこのたとえ話を読めば、これはまさに「福音=良い知らせ」そのものです。「1デナリオン」は当時の1日の日当であると言われますが、それは同時に「人が1日生きていくために必要なもの」だとも言えます。この主人は、1時間しか働かなかった人にも「同じように払ってやりたい」というのです。神はすべての人が生きることを望まれ、すべての人をいつも招いてくださる方だからです。

  (3) 夕方になって賃金を支払う際、主人は最後の人から順番に賃金を渡すようにします。これは19章30節、20章16節の「後の者は先に」という「枠」のような言葉に対応しますが、「先」「後」という順序が本当の問題ではなく、もらう額のほうがもちろん本当は問題であるはずです。
 ただ、このたとえ話では、朝早くから働いた人が他の人に1デナリオンずつ渡されるのを見ていたことが話の展開上、重要になっています。もし朝から働いた人が先に賃金をもらえば、彼らは初めから1日1デナリオンの約束だったのですから、それをもらって満足して帰ったことでしょう。しかし、彼らは、たった1時間しか働かない人が1デナリオンもらったのを知ってしまいました。そこで自分たちは当然もっと多くもらえるだろうという期待を抱くことになり、不平を抱くようになったのです。
 主人は、最初からずっと自分のために働いたこの人々に何かを伝えたいがために、わざとこのようにしたのだとも言えるでしょう。実際、イエスはファリサイ派であれ、自分に忠実な弟子たちであれ、「自分はこんなに苦労して働いてきた」と思っている人に向けてこのたとえを語ったはずです。一生懸命働いてきたことが問題であるはずはありません。ただ「わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ」という主人(神)の心を分かってほしい、と語りかけているのではないでしょうか。
 ルカ15章の放蕩息子のたとえで、父親が帰ってきた弟息子のために宴会を催したのを見て、兄のほうが不平を言ったとき、その兄息子に向かって父が言う言葉も良く似ています。

  (4) 「神は人の働きに応じて報いを与える」という考え方(応報思想)をイエスは100%否定してはいません。しかし、きょうのたとえ話のように「神はどんな人にも必要な恵みを与えてくださる」ということをイエスが強調しているのも事実です。そのことを表す典型的な言葉は「父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださる」(マタイ5章45節)でしょう。当時の人々が常識的に持っていた応報思想の問題点をイエスは見抜いていました。第一の問題は、人間の働きばかりに目が行ってしまい、人を生かす神の大きな愛を見失うことです。もう一つの問題は、人と人との比較にばかり目が行ってしまい、人をさげすんだり、逆に人に嫉妬する世界に落ち込む、ということです。きょうの箇所で朝早くから働いた人の陥った問題はまさにこれでした。
 わたしたちは、「人と人とを比較することはあたりまえ」「競争原理はよいことだ」という社会に生きています。そして、他人と自分を比較して「自分のほうがよくやっているのに認められない」とか、「あの人は自分より怠けているのにいい思いをしている」というようなことをいつも気にしています。逆に、ある場合は「自分は(人に比べて)何もできないからダメだ」と落ち込んでしまうこともあります。きょうの福音は、そういうところからわたしたちを解放し、もっと豊かな生き方へとわたしたちを招いているのではないでしょうか。




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聖書朗読箇所

第一朗読 イザヤ55・6-9


6主を尋ね求めよ、見いだしうるときに。
呼び求めよ、近くにいますうちに。
7神に逆らう者はその道を離れ
悪を行う者はそのたくらみを捨てよ。
主に立ち帰るならば、主は憐れんでくださる。
わたしたちの神に立ち帰るならば、豊かに赦してくださる。
8わたしの思いは、あなたたちの思いと異なり
わたしの道はあなたたちの道と異なると主は言われる。
9天が地を高く超えているように
わたしの道は、あなたたちの道を
わたしの思いはあなたたちの思いを、高く超えている。


第二朗読 フィリピ1・20c-24、27a


 20c〔皆さん、〕生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストが公然とあがめられるようにと切に願い、希望しています。21わたしにとって、生きるとはキリストであり、死ぬことは利益なのです。22けれども、肉において生き続ければ、実り多い働きができ、どちらを選ぶべきか、わたしには分かりません。23この二つのことの間で、板挟みの状態です。一方では、この世を去って、キリストと共にいたいと熱望しており、この方がはるかに望ましい。24だが他方では、肉にとどまる方が、あなたがたのためにもっと必要です。
 27aひたすらキリストの福音にふさわしい生活を送りなさい。


福音朗読 マタイ20・1-16


 〔そのとき、イエスは弟子たちにこのたとえを語られた。〕1「天の国は次のようにたとえられる。ある家の主人が、ぶどう園で働く労働者を雇うために、夜明けに出かけて行った。2主人は、一日につき一デナリオンの約束で、労働者をぶどう園に送った。3また、九時ごろ行ってみると、何もしないで広場に立っている人々がいたので、4『あなたたちもぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払ってやろう』と言った。5それで、その人たちは出かけて行った。主人は、十二時ごろと三時ごろにまた出て行き、同じようにした。6五時ごろにも行ってみると、ほかの人々が立っていたので、『なぜ、何もしないで一日中ここに立っているのか』と尋ねると、7彼らは、『だれも雇ってくれないのです』と言った。主人は彼らに、『あなたたちもぶどう園に行きなさい』と言った。8夕方になって、ぶどう園の主人は監督に、『労働者たちを呼んで、最後に来た者から始めて、最初に来た者まで順に賃金を払ってやりなさい』と言った。9そこで、五時ごろに雇われた人たちが来て、一デナリオンずつ受け取った。10最初に雇われた人たちが来て、もっと多くもらえるだろうと思っていた。しかし、彼らも一デナリオンずつであった。11それで、受け取ると、主人に不平を言った。12『最後に来たこの連中は、一時間しか働きませんでした。まる一日、暑い中を辛抱して働いたわたしたちと、この連中とを同じ扱いにするとは。』13主人はその一人に答えた。『友よ、あなたに不当なことはしていない。あなたはわたしと一デナリオンの約束をしたではないか。14自分の分を受け取って帰りなさい。わたしはこの最後の者にも、あなたと同じように支払ってやりたいのだ。15自分のものを自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、わたしの気前のよさをねたむのか。』16このように、後にいる者が先になり、先にいる者が後になる。」

Posted on 2017/09/15 Fri. 08:30 [edit]

category: 2017年(主日A年)

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