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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第10主日(2018/6/10 マルコ3章20-35節)  


教会暦と聖書の流れ


 イエスのガリラヤでの活動の中の出来事です。イエスの活動の内容は、神の国の福音を宣べ伝え、病人をいやし、悪霊を追い出す、ということでした(マルコ1章14-15, 39節、3章10-12節参照)。多くの群衆が押し寄せて来ましたが、イエスはその中から12人を選び、使徒とされました(マルコ3章13-19節)。それに続く箇所です。


福音のヒント


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  (1) この箇所の冒頭に「身内の人たち」がイエスを取り押さえに来た、という話があり、結びにも「母と兄弟たち」がイエスを呼びに来る話があります。2つの話はこの箇所全体の枠組みのようになっています。この間に、エルサレムから来た律法学者たちのイエスに対する批判とそれに対するイエスの答えが伝えられています。このようにサンドウィッチのような構造になっている場合、単に出来事の順序がそうであったというだけでなく、2つの話にはテーマの関連があると考えることができます。ここでは、身内の人についての話と律法学者たちの話、いずれの話もイエスに対して無理解な人々の姿という点で共通していると言えるでしょう。
 イエスの活動は、病気や悪霊に苦しめられていた人々には、大きな救いと希望を与えるものでしたが、必ずしもすべての人がイエスを好意的に迎え入れたのではありませんでした。ここではイエスに対する否定的な見方が伝えられています。

  (2) 「ベルゼブル」は列王記下1章2-8節の物語で、唯一の真の神への信仰を人々に求めた預言者エリヤ(紀元前8世紀)が否定した異教の神の名で、旧約聖書では「バアル・ゼブブ」と表記されています。新約聖書では、この言葉はサタンと同じ意味で使われています。「サタン」はヘブライ語で「敵対者」を意味し、神に敵対する者を指します。普通、「悪魔」と訳されているギリシア語の言葉は「中傷する者、告訴する者」を意味する「ディアボロスdiabolos」ですが、これは「サタン」と同様の意味で、サタンと悪魔は同じものと考えて間違いありません。「悪霊」と訳される言葉はギリシア語で「ダイモニオンdaimonion」です。旧約聖書では異教の神々を指しましたが、新約聖書では一般的に「汚れた霊、悪霊」を表す言葉になりました。この悪霊の元締めがサタン=悪魔です。

  (3) 「悪魔」「悪霊」と言っても、現代のわたしたちにはピンと来ないかもしれません。古代の人々は、形がなく、目にも見えず、人間の力を超えた大きな力をさまざまに感じていました。それが神から来るものであれば「神の霊、聖霊」であり、逆に悪いものであれば「悪霊、汚れた霊」と呼ばれたのです。福音書の中で、イエスは悪霊に取り憑(つ)かれたとされていた人々をいやしましたが、それは肉体的・精神的な病気のいやしとつながっています。ある種の病気は、人間の力の及ばない悪の力(悪霊)によるものと考えられていたのです。イエスはその人々も決して神から見捨てられた人ではなく、神がその人々をいつくしみ、救ってくださると信じて、その人々に関わっていきました。
 24-27節のたとえはわかりにくいものですが、要するに、サタンがサタンを、悪の力が悪の力を追い出すことはありえない、ということでしょう。さらに悪霊に取り憑かれたとされる人の一人一人を救うことが可能なのは、イエスが悪の元締めであるサタンに打ち勝っているからだということも言えるでしょう。

   (4) 「聖霊を冒涜する」とは何でしょうか。この言葉だけを考えればいろいろな解釈が可能かもしれません。しかし、きょうの福音の文脈から考えれば、悪霊を追い出しているイエスの上に働いている神の力(すなわち聖霊)を認めないことを意味するのだと考えるべきでしょう。目の前で起こっていることが、神から来るものか、悪の力から来るものなのか、それを見極めることができるのは、それぞれの人の心に直接働きかける神の力=聖霊によると言えます。その内なる聖霊の働きにさえ心を閉ざすならば、もはや救いようがない、ということになるのでしょう。イエスを受け入れなかった人々の態度とはまさにそういう態度でした。
 律法学者たちは、目の前の出来事を説明しようとしました。イエスが悪霊を追い出していることは否定できませんし、そこに大きな力が働いていることも認めざるをえません。しかし、そのイエスが神から来た人であることを受け入れようとしないので、これはもっと強い悪魔のしわざだ、と説明するのです。イエスは出来事を説明しようとしません。出会った人の苦しみに共感し、その人々を神が見捨てない人と見て、かかわっていくのです。

  (5) 31節に「母と兄弟たち」、32節に「兄弟姉妹がた」とあります。母はもちろんマリアですが、カトリック教会では伝統的に、イエスに兄弟がいたとは考えられていません。「兄弟姉妹」とは、実際はいとこ(従兄弟・従姉妹)たちのことだとするのが、教会の伝統的な解釈です。21節の「身内の人たち」と同じ人だと考えてもよいでしょう。彼らはイエスに会いに来ます。21節とのつながりを考えれば、イエスをいさめようとしたと言えるでしょう。彼らはイエスが人々の常識を超えるような言動をしていることの意味を理解しません。それは故郷ナザレの人同様(マルコ6章1-6節参照)、イエスを自分の身内で、自分たちと同じレベルの者としてしか理解できなかったからでしょう。
 「神の御心を行う人こそ、わたしの兄弟、姉妹、また母なのだ」(34節)という言葉は、イエスが血縁を超えたまったく新しい人と人とのつながりに生きていることを示しています。「神の御心を行う人」と言えば、何か特別に優れた人の意味でしょうか。しかし、イエスはご自分の周りに集まって来た人々を指して、「見なさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる」と宣言されたのです。この人々はほとんどが病人や障害者、貧しい無学な人々でした。当時の律法の基準からすれば、立派ではない人々、罪人同然の、神から程遠い人々でした。「あなたがたこそわたしの家族だ」、イエスからそう言われた人々の喜びを、わたしたちも感じることができるでしょうか。




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「福音のヒント(PDF)」
 ※集い用に、A4サイズ2ページで印刷できます。


聖書朗読箇所

第一朗読 創世記3・9-15


 9〔アダムが木の実を食べた後に、〕主なる神はアダムを呼ばれた。
 「どこにいるのか。」
 10彼は答えた。
 「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」
 11神は言われた。
 「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」
 12アダムは答えた。
 「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」
 13主なる神は女に向かって言われた。
 「何ということをしたのか。」
 女は答えた。
 「蛇がだましたので、食べてしまいました。」
 14主なる神は、蛇に向かって言われた。
 「このようなことをしたお前は
 あらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で
 呪われるものとなった。
 お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。
 15お前と女、お前の子孫と女の子孫の間に
わたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕き
 お前は彼のかかとを砕く。」


第二朗読 二コリント4・13〜5・1


 4・13〔皆さん、〕「わたしは信じた。それで、わたしは語った」と書いてあるとおり、それと同じ信仰の霊を持っているので、わたしたちも信じ、それだからこそ語ってもいます。14主イエスを復活させた神が、イエスと共にわたしたちをも復活させ、あなたがたと一緒に御前に立たせてくださると、わたしたちは知っています。15すべてこれらのことは、あなたがたのためであり、多くの人々が豊かに恵みを受け、感謝の念に満ちて神に栄光を帰すようになるためです。
 16だから、わたしたちは落胆しません。たとえわたしたちの「外なる人」は衰えていくとしても、わたしたちの「内なる人」は日々新たにされていきます。17わたしたちの一時の軽い艱難は、比べものにならないほど重みのある永遠の栄光をもたらしてくれます。18わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。
 5・1わたしたちの地上の住みかである幕屋が滅びても、神によって建物が備えられていることを、わたしたちは知っています。人の手で造られたものではない天にある永遠の住みかです。


福音朗読 マルコ3・20-35


 20〔そのとき、〕イエスが家に帰られると、群衆がまた集まって来て、一同は食事をする暇もないほどであった。21身内の人たちはイエスのことを聞いて取り押さえに来た。「あの男は気が変になっている」と言われていたからである。22エルサレムから下って来た律法学者たちも、「あの男はベルゼブルに取りつかれている」と言い、また、「悪霊の頭の力で悪霊を追い出している」と言っていた。23そこで、イエスは彼らを呼び寄せて、たとえを用いて語られた。「どうして、サタンがサタンを追い出せよう。24国が内輪で争えば、その国は成り立たない。25家が内輪で争えば、その家は成り立たない。


Posted on 2018/06/01 Fri. 08:30 [edit]

category: 2018年(主日B年)

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