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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第31主日 (2018/11/4 マルコ12章28b-34節)  


教会暦と聖書の流れ


  先週の福音(マルコ10章46-52節)の舞台はエリコでしたが、きょうの箇所はかなり飛んでいて、エルサレムの神殿の境内での場面になっています。その間に、イエスはエルサレムに入り、当時の宗教的・社会的指導者たちとの間でさまざまな対話をしました。これらの対話は、3年周期の主日のミサの朗読配分の中で、A、B、C年に割り振られていて、今年(B年・マルコの年)は、それらの対話の結びにあたるこの箇所だけが読まれます。


福音のヒント


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  (1) イエスがエルサレムの神殿の境内で対話した相手は、祭司長・律法学者・長老(11章27節以下)、ファリサイ派・ヘロデ派(12章13節以下)、サドカイ派(12章18節以下)などで、皆、当時のユダヤ人社会の宗教的・社会的な指導者たちでした。多くの対話はイエスに対して攻撃的な内容なので「論争物語」とも言われますが、きょうの箇所は論争とは言えません。イエスとここに登場する律法学者の意見は一致しているからです。

  (2) 29-30節の「イスラエルよ、聞け・・・」は、申命記6章4-5節の引用です。申命記ではこれに続いて次の言葉があります。「今日わたしが命じるこれらの言葉を心に留め、子供たちに繰り返し教え、家に座っているときも道を歩くときも、寝ているときも起きているときも、これを語り聞かせなさい。更に、これをしるしとして自分の手に結び、覚えとして額(ひたい)に付け、あなたの家の戸口の柱にも門にも書き記しなさい」(申命記6章6-9節)。この箇所がいかに大切にされていたかが分かります。今回のイラストに描かれているのは、この申命記6章4-9節などの聖句を記した小さな羊皮紙の入った小箱を額と腕につけたユダヤ人の姿です。このような習慣はイエス時代にすでにあり、福音書の中で「聖句の入った小箱」(マタイ23章5節)と言われているものがこれにあたります。この申命記6章4-5節が最も大切な掟であることは、ユダヤ人の誰もが認めていたことでしょう。
 神を愛するとはどういうことでしょうか。キリシタン時代の人は「神の愛(ラテン語のカリタスcaritas)」のことを「御大切(ごたいせつ)」と訳したと言われます。「愛」とは「大切にすること」だといえば、日本語としてはもっとも分かりやすいかもしれません。

  (3) もう1つの掟「隣人を自分のように愛しなさい」はレビ記19章18節にあります。新共同訳聖書では、レビ記17-26章のはじめに「神聖法集」という見出しが付けられていて、この部分が大きな1つの律法集であることが分かります。19章はその中心ともいえる箇所です。「あなたたちは聖なる者となりなさい。あなたたちの神、主であるわたしは聖なる者である」(19章2節)という言葉にこの神聖法集の根本的な考え方が表れています。「聖」であることとは、単に祭儀的な意味での「聖」ではなく、むしろ対人関係において神のように「貧しく弱い立場にいる人を大切にすること」が求められています。その中にこの隣人愛の掟があります。
 「隣人」という言葉は確かに近い人々を表す言葉です。ルカ10章では「隣人とは誰か」が問題になり、イエスは有名な「善いサマリア人」のたとえを語ることになりました。

  (4) レビ記も決して同胞だけを愛すればいいと教えてはいません。「寄留者があなたの土地に共に住んでいるなら、彼を虐げてはならない。あなたたちのもとに寄留する者をあなたたちのうちの土地に生まれた者同様に扱い、自分自身のように愛しなさい。なぜなら、あなたたちもエジプトの国においては寄留者であったからである。わたしはあなたたちの神、主である。」(レビ記19章33-34節)。
 ここで大切なのは、「寄留者を愛せ」という掟の根拠は、神がエジプトに寄留していたイスラエルの民の苦しみを見、叫び声を聞き、痛みを知り、救ってくださった神の救いのわざ(出エジプト記3・7参照)だということです。つまり、あなたがたには寄留者の苦しみが分かるはずだから、寄留者を大切にしなさい、ということであり、同時にまた、神が愛してくださったように、あなたがたも愛すべきだ、ということでもあります。
 イエスの時代のファリサイ派や律法学者の問題は、掟を守ることによって神の救いにあずかることができると考え、自分の力で救いを勝ち取ろうとしたことでした。掟の前提にすべての人を救ってくださる神の愛があることを忘れ、自分の力に頼ろうとした結果、彼らは神との生きた関係を見失い、また、貧しく律法を知らない人々を「罪びと」として切り捨てることになってしまったのです。イエスが批判したのはまさにこの点でした。
 
  (5) 律法学者は「第一の掟」についてたずねますが、イエスは2つの掟を語りました。この2つの掟を結び付けたことは確かにイエスの考えをよく表しているでしょう。ただし、この2つを最も大切な掟だとする考えはイエスだけのものとも言えないようです。実際、ルカ10章でこの2つの掟を語るのはイエスではなく、律法学者のほうです。
 この箇所でも最も重要な掟について、イエスと律法学者の意見は一致しています。イエスの言う「あなたは神の国から遠くない」(34節)という言葉は、律法学者の答えを評価するものですが、神の国を明確に約束しているとも言えません。問題は掟をどう考えるかではなく、その掟をどう生きるか、です。マルコ福音書の中で神の国が明確に約束されるのは「幼子」でした(10章14-15節)。イエスが指し示しているのは、神の愛に対する幼子のような信頼を持ったとき、神と人への愛が沸き起こってくるという世界なのでしょう。
 マルコはこの対話で、11章27節から始まった当時の宗教的指導者たちとイエスとの対話を締めくくります。「もはや、あえて質問する者はなかった」(34節)。誰もイエスに反論できませんでした。しかし、彼らの多くがイエスに対して抱いていた反感は変わりません。本当の対立は、議論の中身ではないのです。律法の基準に基づく自分たちの地位や名誉を守ろうとした当時の社会的・宗教的指導者たちと、すべての人の父(アッバ)である神に信頼し、貧しく小さな人々とともに歩むイエスの生き方が対立しているのです。




ダウンロードできます
「福音のヒント(PDF)」
 ※集い用に、A4サイズ2ページで印刷できます。


聖書朗読箇所

第一朗読 申命記6・2-6


 2〔モーセは民に言った。〕「あなたもあなたの子孫も生きている限り、あなたの神、主を畏れ、わたしが命じるすべての掟と戒めを守〔るなら、〕長く生きる。 3イスラエルよ、あなたはよく聞いて、忠実に行いなさい。そうすれば、あなたは幸いを得、父祖の神、主が約束されたとおり、乳と蜜の流れる土地で大いに増える。
 4聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。 5あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。 6今日わたしが命じるこれらの言葉を心に留め〔なさい。〕」


第二朗読 ヘブライ7・23-28


 23〔皆さん、〕レビの系統の祭司たちの場合には、死というものがあるので、務めをいつまでも続けることができず、多くの人たちが祭司に任命されました。24しかし、イエスは永遠に生きているので、変わることのない祭司職を持っておられるのです。25それでまた、この方は常に生きていて、人々のために執り成しておられるので、御自分を通して神に近づく人たちを、完全に救うことがおできになります。
 26このように聖であり、罪なく、汚れなく、罪人から離され、もろもろの天よりも高くされている大祭司こそ、わたしたちにとって必要な方なのです。27この方は、ほかの大祭司たちのように、まず自分の罪のため、次に民の罪のために毎日いけにえを献げる必要はありません。というのは、このいけにえはただ一度、御自身を献げることによって、成し遂げられたからです。28律法は弱さを持った人間を大祭司に任命しますが、律法の後になされた誓いの御言葉は、永遠に完全な者とされておられる御子を大祭司としたのです。


福音朗読 マルコ12・28b-34


 〔そのとき、一人の律法学者が進み出て、イエスに尋ねた。〕28b「あらゆる掟のうちで、どれが第一でしょうか。」 29イエスはお答えになった。「第一の掟は、これである。『イスラエルよ、聞け、わたしたちの神である主は、唯一の主である。30心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』 31第二の掟は、これである。『隣人を自分のように愛しなさい。』この二つにまさる掟はほかにない。」 32律法学者はイエスに言った。「先生、おっしゃるとおりです。『神は唯一である。ほかに神はない』とおっしゃったのは、本当です。33そして、『心を尽くし、知恵を尽くし、力を尽くして神を愛し、また隣人を自分のように愛する』ということは、どんな焼き尽くす献げ物やいけにえよりも優れています。」34イエスは律法学者が適切な答えをしたのを見て、「あなたは、神の国から遠くない」と言われた。もはや、あえて質問する者はなかった。


Posted on 2018/10/26 Fri. 08:30 [edit]

category: 2018年(主日B年)

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