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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

待降節第2主日 (2018/12/9 ルカ3章1-6節)  


教会暦と聖書の流れ


 待降節第2、第3主日のミサの福音では、毎年洗礼者ヨハネについての箇所が読まれます。今年はルカ福音書から採られた箇所です。ルカ福音書の1~2章で、洗礼者ヨハネとイエスの誕生・成長の話が伝えられていますが、そこでヨハネはイエスの先駆者として描かれていました。きょうの箇所でもヨハネはイエスの到来を準備する人として描かれています。ただし、もちろん、わたしたちが本当に見つめるべきなのは、洗礼者ヨハネの姿ではなく、やがて来られるイエスのほうです。


福音のヒント


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  (1) 「皇帝ティベリウスの治世の第十五年」(1節)。ティベリウスは第2代ローマ皇帝で、紀元14年に即位していますから、これは紀元28年ごろのことだということになります。「神の言葉が荒れ野でザカリアの子ヨハネに降(くだ)った」(2節)は、旧約聖書に見られる典型的な預言者の紹介の仕方です。たとえば、「ダレイオスの第二年八月に、イドの孫でベレクヤの子である預言者ゼカリヤに主の言葉が臨んだ」(ゼカリヤ1章1節)。
 「預言者」はギリシア語では「プロフェーテースprophetes」で、もともと「プロ(予め)」と「フェーミ(言う)」という語の合成語ですから、ギリシア語の訳としては「予言者」のほうが正確でしょう。しかし、この背景にあるヘブライ語の「ナービー」という言葉は単に「予言する人」ではなく「神の言葉を告げる人」という意味が強いので「預言者」という漢字を当てたほうが内容的には適切だと言えそうです。ちなみに、中国語では「豫」(「予」の正字体)と「預」の間に意味の差はないそうです。

  (2) イスラエルの歴史の中では、王国時代から捕囚後まで数多くの預言者が活動しましたが、洗礼者ヨハネやイエスの時代は、最後の預言者が去ってからかなりの時がたっていました。神はもはや預言者の口をとおして民に語りかけることはない、と感じられていた時代だったのです。その時代に「預言者」として登場したのが洗礼者ヨハネでした。神はこの世界に対して、今まさに決定的なことをなさろうとしている、その神の言葉を伝えるのが預言者としての洗礼者ヨハネの使命でした。
 「罪の赦(ゆる)しを得させるために悔い改めの洗礼を」(3節)とありますが、「洗礼」はギリシア語で「バプティスマbaptisma」です。この言葉は元々「水に沈めること、浸すこと」を意味しています。ヨハネが行なっていたバプティスマとは、ヨルダン川に人の全身を沈めるものでした。一度水の中に沈み、そこから立ち上がることは、古い自分に死んで新たないのちに生きることを表します。「悔い改め」と訳された語は「メタノイアmetanoia」で、元の意味は「心を変えること」です。旧約聖書では「主に立ち返る」と言われていることです。「心を神に向け、神に立ち返る」という意味で「回心」という漢字が当てられるようになりました。古い自分に死んで、新たに神とともに生きる、と言ったらよいでしょうか。この目的は「罪のゆるし」です。罪とは神と断絶することですから、回心とそのしるしであるバプティスマは、「罪のゆるし=神との和解」をもたらすものなのです。
もちろん、このことは本当の意味ではイエスによって実現することになります。

(3) 4-6節はイザヤ書40章の引用です。この箇所の少し前から見てみましょう。
「1慰めよ、わたしの民を慰めよと/あなたたちの神は言われる。2エルサレムの心に語りかけ/彼女に呼びかけよ/苦役(くえき)の時は今や満ち、彼女の咎(とが)は償われた、と。罪のすべてに倍する報いを/主の御手(みて)から受けた、と。
 3呼びかける声がある。主のために、荒れ野に道を備え/わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。4谷はすべて身を起こし、山と丘は身を低くせよ。険しい道は平らに、狭い道は広い谷となれ。5主の栄光がこうして現れるのを/肉なる者は共に見る
 イザヤ40~55章は「第二イザヤ」と呼ばれています。1~39章とは別の、バビロン捕囚時代(紀元前6世紀)の無名の預言者の言葉と考えられています。この捕囚の苦しみは自分たちの罪の結果だから仕方ない、と考えていた当時のイスラエルの民に向かって、神によるゆるしと解放を告げるのが第二イザヤのメッセージでした。
 上のイザヤ書本文では、「荒れ野に道を備え…と呼びかける声」となっています。荒れ野の道とは捕囚の地バビロンからイスラエルの民が神とともに帰国する道でした。「道を備えよ」と「呼びかける声」は本来、天から預言者に向かって呼びかける声のことでした。福音書は、七十人訳聖書(古代のギリシア語訳旧約聖書)に基づいてこの箇所を「荒れ野で叫ぶ者の声」と読んで、これを洗礼者ヨハネに当てはめています。また、イザヤ書本文では「主」は「わたしたちの神」のことですが、福音書の引用では「わたしたちの神のために」が省かれ、「主」をイエスのことと受け取っています。

  (4) ルカはマタイやマルコよりも長い引用をしています。それは「人は皆、神の救いを仰ぎ見る」という言葉を伝えたかったからでしょう。翻訳を比べてみるとイザヤ40章5節とルカ3章6節は少し違っています。「人は皆」は直訳では「すべての肉」です。「主の栄光がこうして現れる」を「神の救い」としたのは七十人訳の影響です。いずれにせよ、ルカはイエスによってもたらされる救いがすべての人に及ぶことを強調するためにこの言葉を引用しています。新約聖書は洗礼者ヨハネを、イエスの先駆者、イエスの到来を準備した人として描きます。わたしたちが見つめるべきなのは、洗礼者ヨハネではなく、すべての人の救い主として来られる「主」イエスのほうなのです。
 待降節はただ単にクリスマスを準備する季節ではありません。12月24日までイエスの誕生を待って、25日には誕生を祝うというだけではなく、待降節から降誕節までの期間全体をとおして、「イエスが来られる」ことの意味を味わうと考えたらよいでしょう。
 イエスの到来には3重の意味があります。「2千年前に来られたイエス」「世の終わりに再び来られるイエス」「今わたしたちの生活の中に来てくださるイエス」。わたしたちにとって特にこの3番目の意味は大切でしょう。だとすれば、「主の道」とはただ主が来られる道ではなく、わたしたちが主とともに歩んでいく道でもあるはずです。




ダウンロードできます
「福音のヒント(PDF)」
※集い用に、A4サイズ2ページで印刷できます。


聖書朗読箇所

第一朗読 バルク5・1-9


1エルサレムよ、悲しみと不幸の衣を脱ぎ、
神から与えられる栄光で永遠に飾れ。
2神から与えられる義の衣を身にまとい、
頭に永遠なる者の栄光の冠をつけよ。
3神は天の下のすべての地に
お前の輝きを示される。
4お前は神から「義の平和、敬神の栄光」と呼ばれ、
その名は永遠に残る。
5エルサレムよ、立ち上がれ、
高い山に立って東の方に目を向けよ。
お前の子らは、
神が覚えていてくださったことを喜び、
西からも東からも
聖なる者の言葉によって集められる。
6お前の子らは敵に追い立てられ、
徒歩でお前のもとを去ったが、
神は彼らを、玉座につく王のように高く上げ、
栄光のうちにお前のもとに連れ戻される。
7すべての高い山、果てしなく続く丘は低くなれ、
谷は埋まって平地になれ、と神は命じられた。
それはイスラエルが神の栄光に包まれ、
安全に歩むため。
8森も、香り高いすべての木々も、
神の命令でイスラエルのために木陰をつくる。
9神は自らの慈しみと義をもって栄光の輝きを表し、
喜びのうちにイスラエルを導かれる。


第二朗読 フィリピ1・4-6、8-11


 4〔皆さん、わたしは〕あなたがた一同のために祈る度に、いつも喜びをもって祈っています。 5それは、あなたがたが最初の日から今日まで、福音にあずかっているからです。 6あなたがたの中で善い業を始められた方が、キリスト・イエスの日までに、その業を成し遂げてくださると、わたしは確信しています。
 8わたしが、キリスト・イエスの愛の心で、あなたがた一同のことをどれほど思っているかは、神が証ししてくださいます。9わたしは、こう祈ります。知る力と見抜く力とを身に着けて、あなたがたの愛がますます豊かになり、 10本当に重要なことを見分けられるように。そして、キリストの日に備えて、清い者、とがめられるところのない者となり、11イエス・キリストによって与えられる義の実をあふれるほどに受けて、神の栄光と誉れとをたたえることができるように。


福音朗読 ルカ3・1-6


 1皇帝ティベリウスの治世の第十五年、ポンティオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟フィリポがイトラヤとトラコン地方の領主、リサニアがアビレネの領主、 2アンナスとカイアファとが大祭司であったとき、神の言葉が荒れ野でザカリアの子ヨハネに降った。3そこで、ヨハネはヨルダン川沿いの地方一帯に行って、罪の赦しを得させるために悔い改めの洗礼を宣べ伝えた。4これは、預言者イザヤの書に書いてあるとおりである。
 「荒れ野で叫ぶ者の声がする。
 『主の道を整え、
 その道筋をまっすぐにせよ。
 5谷はすべて埋められ、
 山と丘はみな低くされる。
 曲がった道はまっすぐに、
 でこぼこの道は平らになり、
 6人は皆、神の救いを仰ぎ見る。』」


Posted on 2018/11/30 Fri. 09:30 [edit]

category: 2019年(主日C年)

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