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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

復活節第6主日 (2020/5/17 ヨハネ14章15-21節)  


教会暦と聖書の流れ


 先週に引き続き、ヨハネ福音書の最後の晩さんの席でのイエスの言葉です。イエスは、自分は目に見える形ではもういなくなる、しかし、何かが残るということをさまざまな形で約束しますが、その約束の中心は「聖霊の派遣」だと言えるでしょう(14章16-17節、14章26節、15章26-27節、16章7-15節)。イエスが世を去って父のもとに行き、弟子たちに残されるもの・与えられるものは何よりも聖霊なのです。復活節の流れの中では、聖霊降臨の主日を準備するような箇所だとも言えます。


福音のヒント


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 (1) この箇所の中心にあるのは「わたしは、あなたがたをみなしごにはしておかない」(18節)という力強い約束です。この言葉を中心にして、16-17節に「聖霊」の約束があり、19-20節には「イエスがともにいる」という約束があります。以下のように図解してみると分かりやすいでしょう。
15節    愛する、掟を守る
 16-17節 聖霊が一緒にいる、世は見ない、知らない・あなたがたは知っている
  18節  あなたがたをみなしごにはしておかない
 19-20節 世はわたしを見ない・あなたがたは見る、分かる。あなたがたのうちにいる
21節    掟を守る、愛する
 このように見ると、「聖霊が一緒にいる」ということと「イエスがわたしたちのうちにいる」ということはほとんど同じように考えられていることになります。「聖霊」とはわたしたちのうちに働く神の力ですが、その聖霊の働きと、復活したイエスが目に見えない形でわたしたちのうちにおられ、わたしたちを支え導いてくださるということとは、わたしたちの体験の中でもほとんど区別できないことではないでしょうか。言葉や表現は確かに違いますが、言葉や表現よりも聖霊やイエスに支えられているからわたしたちは決して孤立無援ではないと実感することのほうが大切でしょう。

  (2) この箇所で、聖霊は「別の弁護者」と呼ばれています。「弁護者」はギリシア語で「パラクレートスparakletos」です。「慰め主」とも訳されますが、もともとは「そばに(パラpara)」「呼ばれた者」(呼ぶ=カレオーkaleo)の意味です。裁判の席では、そばにいて助けてくれる人という意味で「弁護者」の意味になります。もっと一般的には、「一緒にいて支えとなってくださる方」と言ったらよいでしょうか。ヨハネの第一の手紙2章1節にあるように、イエスご自身が第一の「パラクレートス」と考えられているので、ここで聖霊が「別の弁護者」と呼ばれているのでしょう。

  (3) この箇所では、「世」と「あなたがた」がはっきりと対比されています。ヨハネ福音書が書かれた1世紀末の状況では、キリスト者が完全にユダヤ教から排斥されたこととローマ帝国がキリスト教を激しく迫害していること、この2つの厳しい状況がありました。その中では、「キリストを受け入れない世」と「イエスの弟子たち」の対立は不可避だと考えられたのでしょう。そこで、この箇所でも「世」は神とキリストに反するものだということが当然のように前提とされているのです。
 一方、そんなヨハネ福音書だからこそ、ヨハネ3章16節の「神は、その独り子(ひとりご)をお与えになったほどに、世を愛された」という言葉に重みがあります。神は世が良いものだから愛するのではないのです。世は確かにどうしようもなく神から離れ、滅びへと向かっている世かもしれない。しかし「だから世は滅びてもかまわない」というのではなく、「だからこそ、神はひとり子イエスによって世に救いをもたらそうとされた」のだというのです。「光が世に来たのに、人々はその行いが悪いので、光よりも闇の方を好んだ。それが、もう裁きになっている」(3章19節)。この光と闇のイメージも大切です。イエスは闇に閉ざされた世界に光として来られました。問題はこの光を受け取るか、光に背を向けて闇の中にとどまるか、なのです。
 わたしたちはこの世界をどのように感じているでしょうか。この世界もなかなか良いものだと感じるときがあるでしょうか。あるいは、この世界には良い面もあれば悪い面もある、と感じているでしょうか。時には、この世界は絶望的に悪い(真っ暗闇だ)と感じてしまうこともあるでしょうか。このような感じ方の違いによって、「世」と「わたしたち」についてのヨハネ福音書の言葉の受け取り方も変わります。
 たとえ大きな問題や闇を感じていても「だから世はダメだ」ではなく、「だからこそキリストの光が必要だ」と見ることが大切なのでしょう。

  (4) 15、21節の「掟」という言葉はギリシア語では「エントレーentole」で、「命じる」という意味の動詞「エンテッロマイentellomai」から来ていて、「掟、命令」の意味があります。ところで、ヨハネ福音書で「新しい掟」(13章34節)、「わたしの掟」(15章12節)と呼ばれているのは、「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」ということだけです。「愛」は心の中から自然に沸き起こるものであると考えると「掟」や「命令」という言葉は馴染まないかもしれません。「掟を守る」と言っても、それは外面的に守るべき規則のようなものではないのです。むしろ、愛の掟を実現するのは、わたしたちのうちにおられるイエス(あるいは聖霊)の働きだと言ったらよいでしょう。イエスの愛がわたしたちの中にとどまり(あるいは、わたしたちがイエスの愛のうちにとどまり=ヨハネ15章9-10節)、聖霊がわたしたちのうちに働くとき、わたしたちの中に「互いに愛し合う」という生き方が実現し始めるのです。
 わたしたちは自分の人生の中で、愛に反する現実をたくさん経験してきています。暴力、裏切り、無関心などなど。しかし、わたしたちの人生はそれらに覆い尽くされているわけではありません。愛の体験も必ずあるはずです。その愛の体験を深く掘り下げてみたとき、「聖霊が一緒にいてくださること」「イエスがわたしたちのうちにおられること」が見えてくるのではないでしょうか。




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聖書朗読箇所

第一朗読 使徒言行録8・5-8、14-17


 5〔そのころ、〕フィリポはサマリアの町に下って、人々にキリストを宣べ伝えた。6群衆は、フィリポの行うしるしを見聞きしていたので、こぞってその話に聞き入った。7実際、汚れた霊に取りつかれた多くの人たちからは、その霊が大声で叫びながら出て行き、多くの中風患者や足の不自由な人もいやしてもらった。8町の人々は大変喜んだ。
 14エルサレムにいた使徒たちは、サマリアの人々が神の言葉を受け入れたと聞き、ペトロとヨハネをそこへ行かせた。15二人はサマリアに下って行き、聖霊を受けるようにとその人々のために祈った。16人々は主イエスの名によって洗礼を受けていただけで、聖霊はまだだれの上にも降っていなかったからである。17ペトロとヨハネが人々の上に手を置くと、彼らは聖霊を受けた。


第二朗読 一ペトロ3・15-18


 15〔愛する皆さん、〕心の中でキリストを主とあがめなさい。あなたがたの抱いている希望について説明を要求する人には、いつでも弁明できるように備えていなさい。16それも、穏やかに、敬意をもって、正しい良心で、弁明するようにしなさい。そうすれば、キリストに結ばれたあなたがたの善い生活をののしる者たちは、悪口を言ったことで恥じ入るようになるのです。17神の御心によるのであれば、善を行って苦しむ方が、悪を行って苦しむよりはよい。18キリストも、罪のためにただ一度苦しまれました。正しい方が、正しくない者たちのために苦しまれたのです。あなたがたを神のもとへ導くためです。キリストは、肉では死に渡されましたが、霊では生きる者とされたのです。


福音朗読 ヨハネ14・15-21


 〔そのとき、イエスは弟子たちに言われた。〕15「あなたがたは、わたしを愛しているならば、わたしの掟を守る。16わたしは父にお願いしよう。父は別の弁護者を遣わして、永遠にあなたがたと一緒にいるようにしてくださる。17この方は、真理の霊である。世は、この霊を見ようとも知ろうともしないので、受け入れることができない。しかし、あなたがたはこの霊を知っている。この霊があなたがたと共におり、これからも、あなたがたの内にいるからである。18わたしは、あなたがたをみなしごにはしておかない。あなたがたのところに戻って来る。19しばらくすると、世はもうわたしを見なくなるが、あなたがたはわたしを見る。わたしが生きているので、あなたがたも生きることになる。20かの日には、わたしが父の内におり、あなたがたがわたしの内におり、わたしもあなたがたの内にいることが、あなたがたに分かる。21わたしの掟を受け入れ、それを守る人は、わたしを愛する者である。わたしを愛する人は、わたしの父に愛される。わたしもその人を愛して、その人にわたし自身を現す。」

Posted on 2020/05/08 Fri. 08:30 [edit]

category: 2020年(主日A年)

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