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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

主の昇天 (2020/5/24 マタイ28章16-20節)  


教会暦と聖書の流れ


 使徒言行録によると、復活したイエスは40日にわたって弟子たちに姿を現した後、天に上げられ(1章=きょうの第一朗読)、50日目の五旬祭(ペンテコステ)の日に聖霊が降(くだ)りました(2章)。教会の暦はこれらの記事に基づいて復活節を祝っています(本来、主の昇天の祭日は40日目の復活節第6木曜日ですが、日本のようにキリスト教国でない国では日曜日に移して祝われています)。
 A年の主の昇天では、マタイ福音書の結びの部分が読まれます。ここには、復活したイエスが神の子としての栄光・権威を受けたことと、目に見えないがいつもわたしたちとともにいてくださるという、復活節全体の二つの大きなテーマがはっきりと示されています。


福音のヒント


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  (1) マタイ28章7,10節の空(から)の墓の場面で天使から告げられていた、ガリラヤでのイエスと弟子たちの出会いがここで実現します。「山」は、特別にマタイ福音書にとって啓示の場でした(マタイ5章1節、17章1節など参照)。「疑う者もいた」(17節)という箇所は「弟子たちはひれ伏し、(同時に彼ら=同じ弟子たちは)疑った」とも受け取れます。マタイは、復活を信じることが難しいと感じる後(のち)の時代の人々に、「イエスの弟子たちにも疑う心があった。しかし、イエスの力強い言葉を聞くことによって、信じる者に変えられていったのだ」と語りかけようとしているのかもしれません。

  (2) 19-20節には「行く」「弟子にする」「洗礼を授ける」「教える」という4つの動詞がありますが、このうち、原文ではっきりと命令法で書かれているのは「弟子にしなさい」という言葉だけで、他は分詞の形です。「行く」のは「弟子にする」ためですし、「洗礼を授ける」と「教える」は、「弟子にする」ことのより具体的な内容なのです。マタイ福音書では、4章18節のガリラヤ湖畔に始まるイエスの活動全体を「弟子作り」(人々を弟子として招き、弟子として育てること)だったと言うことができるのではないでしょうか。これまでイエスがしてきた「弟子作り」という活動がここでイエスの弟子に受け継がれ、同じ「ガリラヤ」から始まり「すべての民」に広がっていくのです。もちろん、イエスの弟子たちに求められるのは、自分たちの弟子を作ることではなく「イエスの弟子」を作ることです。
 「父と子と聖霊のみ名によって洗礼を授ける」はマタイ福音書が書かれた時代(紀元80年頃)の教会で、実際の洗礼式で用いられていた表現だと考えられています。「洗礼を授ける」の元の意味は「(水に)浸す、沈める」です。この箇所は直訳では「父と子と聖霊の名の中に沈める」となります。「名」は単なる呼び名ではなく、そのものの実体を表します。洗礼とは「父と子と聖霊という神のいのちの中に人を招き入れること」だと考えたらよいでしょう。「父と子と聖霊」という表現は、イエスご自身の洗礼(マタイ3章16-17節。聖霊が降り、天から「わたしの愛する子」という声が聞こえた)をも思い出させます。キリスト者の洗礼は、イエスご自身の洗礼にあずかることだとも言えます。

  (3) 「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(20節)は、マタイ1章23節を思い出させます。「『見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。』この名は、『神は我々と共におられる』と言う意味である」。イエスの誕生に関連してこのように述べたマタイは、最後に「共にいる」というイエスの力強い約束を伝えています。「神が(キリストが)共にいる」というテーマはマタイ福音書全体を貫くものだと言うことができます。今のわたしたちが「共にいてくださるイエス」をどのように感じることができるのか、マタイ福音書の中からヒントを探ってみましょう。

  (4) マタイ18章20節「二人または三人がわたしの名によって集まるところには、わたしもその中にいるのである」
 キリストを信じる者同士の集いの中にキリストがいてくださる、と感じることができればどんなに素晴らしいことでしょうか。残念ながら、教会の中にも人間関係の問題やトラブルがあります。教会の中で人に傷つけられ、この集まりの中にキリストがいるなんて信じられない、と感じることもあるかもしれません。客観的に教会という組織を観察していても、そこにキリストを見いだすことは難しいかもしれないのです。組織としての教会よりも、人と人が本気でキリストに信頼して集まるということが大切でしょう。それは一緒に聖書を読んだり共に祈ったりする小さな集いかもしれません。わたしたち一人一人がイエスの名において人と出会おうとすることからすべては始まるのではないでしょうか。

  (5) マタイ25章40節「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」
 飢え渇き、病気であり、住むところも着るものもないような人々の中にキリストがいるという約束。マザーテレサをはじめ多くの人が、貧しい人との出会いの中でキリストとの出会いを体験しました。それはわたしたちの身近な体験にも通じることではないでしょうか。あるいはまた、わたしたち自身が自分の貧しさや苦しみの中にあって、兄弟であるキリストと深く結ばれていることを感じたという体験もきっとあることでしょう。

  (6) マタイ26章26-28節「取って食べなさい。これはわたしの体である」「皆、この杯から飲みなさい。これは、罪が赦されるように、多くの人のために流されるわたしの血、契約の血である」
 主の食卓を囲むとき、そこにキリストがいてくださるということは、キリスト者にとって本当に大きな支えです。新型コロナウイルス感染症の世界的流行の中で、今、わたしたちの多くは聖体をいただくことができません。そんな時だからこそ、聖体への憧れとともに、それでも共にいてくださる主への信頼を深めることができますように。




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聖書朗読箇所

第一朗読 使徒言行録1・1-11


 1‐2テオフィロさま、わたしは先に第一巻を著して、イエスが行い、また教え始めてから、お選びになった使徒たちに聖霊を通して指図を与え、天に上げられた日までのすべてのことについて書き記しました。
 3イエスは苦難を受けた後、御自分が生きていることを、数多くの証拠をもって使徒たちに示し、四十日にわたって彼らに現れ、神の国について話された。4そして、彼らと食事を共にしていたとき、こう命じられた。「エルサレムを離れず、前にわたしから聞いた、父の約束されたものを待ちなさい。5ヨハネは水で洗礼を授けたが、あなたがたは間もなく聖霊による洗礼を授けられるからである。」
 6さて、使徒たちは集まって、「主よ、イスラエルのために国を建て直してくださるのは、この時ですか」と尋ねた。7イエスは言われた。「父が御自分の権威をもってお定めになった時や時期は、あなたがたの知るところではない。8あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」9こう話し終わると、イエスは彼らが見ているうちに天に上げられたが、雲に覆われて彼らの目から見えなくなった。10イエスが離れ去って行かれるとき、彼らは天を見つめていた。すると、白い服を着た二人の人がそばに立って、11言った。「ガリラヤの人たち、なぜ天を見上げて立っているのか。あなたがたから離れて天に上げられたイエスは、天に行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになる。」


第二朗読 エフェソ1・17-23


 17〔皆さん、〕どうか、わたしたちの主イエス・キリストの神、栄光の源である御父が、あなたがたに知恵と啓示との霊を与え、神を深く知ることができるようにし、18心の目を開いてくださるように。そして、神の招きによってどのような希望が与えられているか、聖なる者たちの受け継ぐものがどれほど豊かな栄光に輝いているか悟らせてくださるように。19また、わたしたち信仰者に対して絶大な働きをなさる神の力が、どれほど大きなものであるか、悟らせてくださるように。20神は、この力をキリストに働かせて、キリストを死者の中から復活させ、天において御自分の右の座に着かせ、21すべての支配、権威、勢力、主権の上に置き、今の世ばかりでなく、来るべき世にも唱えられるあらゆる名の上に置かれました。22神はまた、すべてのものをキリストの足もとに従わせ、キリストをすべてのものの上にある頭として教会にお与えになりました。23教会はキリストの体であり、すべてにおいてすべてを満たしている方の満ちておられる場です。


福音朗読 マタイ28・16-20


 16〔そのとき、〕十一人の弟子たちはガリラヤに行き、イエスが指示しておかれた山に登った。17そして、イエスに会い、ひれ伏した。しかし、疑う者もいた。18イエスは、近寄って来て言われた。「わたしは天と地の一切の権能を授かっている。19だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、20あなたがたに命じておいたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。」


Posted on 2020/05/15 Fri. 08:30 [edit]

category: 2020年(主日A年)

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