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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

年間第2主日 (2021/1/17 ヨハネ1章35-42節)  


教会暦と聖書の流れ


 年間主日のミサの福音朗読は3年周期で、マタイ、マルコ、ルカ福音書をもとにイエスの活動の姿を思い起こしていきます。ヨハネ福音書は主に四旬節や復活節に読まれますが、イエスの活動の最初のころのエピソードを伝える箇所だけは、年間第2主日に読まれることになっています。
内容的には「イエスが姿を現し、人々がイエスの光に出会う」というものであって、「栄光の現れ」(「主の公現」の福音のヒント参照)という降誕節のテーマを引き継いでいます。


福音のヒント


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  (1) ヨハネ福音書1章1-18節は一般的に「序文」と言われています。実際の物語は19節から始まりますが、29節、35節、43節に同じ「その翌日」という言葉があり、2章1節には「三日目に」という言葉があります。このように日付を追っていくのはこの部分だけですので、特別な意味がありそうです。1章19節の日を「1日目」と数えると、29節が「2日目」、35節からが「3日目」、43節からが「4日目」、2章1節の「三日目」は「4日目」から数えているので「6日目」ということになります。「6日間」は創世記第1章の天地創造を思い出させるのではないでしょうか。ヨハネ福音書は「新しい創造」とも言うべき、神のわざがここに始まったことを印象づけようとしているのでしょう。そのクライマックスは2章11節の「イエスは、この最初のしるしをガリラヤのカナで行って、その栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた」ということなのです。

  (2) 「神の小羊」という言葉にはいろいろなニュアンスが含まれています。1章29節では「世の罪を取り除く神の小羊」と言われました。ここで「取り除く」と訳されたギリシア語の「アイローairo」は「取る」の意味ですが、「取り去る」だけでなく、「取り上げる、負う」というような意味もあります。自分の身に人々の「罪をにない」、人々を「罪から解放した」というイエスの十字架の救いのわざを暗示するのが、「神の小羊」という言葉なのです。もちろん、この場面で洗礼者ヨハネが二人の弟子にこう言っても、聞いた弟子には何のことか分からなかったでしょう。この言葉の意味よりも、むしろここでは「この方だ、この方を見なさい」とヨハネが指し示していることが大切なのです。

  (3) ヨハネ福音書の中でのイエスの第一声は「何を求めているのか」(38節)というものです。「○○しなさい」でも「○○するな」でもなく、相手の求めていることに耳を傾け、それを受け取ろうとしてくださる言葉です。イエスはわたしたち一人一人にもまずそう問いかけてくださっているのではないでしょうか。
 これに対する二人の答えは「ラビ、どこに泊まっておられるのですか」というもので、質問に対する答えの形にはなっていません。「ラビ」はヘブライ語で教師に対する尊敬を表す呼び名です。38-39節にある3回の「泊まる」はギリシア語では「メノーmeno」という言葉が使ってありますが、この言葉はヨハネ福音書の中で大切な使われ方をしています。

  (4) 典型的なのはヨハネ15章です。「1 わたしはまことのぶどうの木、わたしの父は農夫である。・・・4 わたしにつながっていなさい。わたしもあなたがたにつながっている。ぶどうの枝が、木につながっていなければ、自分では実を結ぶことができないように、あなたがたも、わたしにつながっていなければ、実を結ぶことができない」。ここで「~につながっている」と訳されているのは「メノー・エン」です(「エンen」は「~のうちに」という意味の前置詞)。これは15章9節以下では「~のうちにとどまる」と訳されます。「9 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛にとどまりなさい。10 わたしが父の掟を守り、その愛にとどまっているように、あなたがたも、わたしの掟を守るなら、わたしの愛にとどまっていることになる」つまり、「メノー」はヨハネ福音書の中で父とイエス、イエスとわたしたちの深い結びつきを表す特別な言葉だと言えます。だとすれば「どこに泊まっておられますか」は単に滞在先をたずねているだけでなく、「あなたはいったいどういう方か。神とどのような関係にあるか」という問いでもあるのです。また、この問いはもっと単純に「あなたのおられるところにわたしたちも行きたい。そして、あなたとともに時を過ごしたい」という意味だと考えることもできます。そう考えれば、この言葉は「何を求めているのか」とイエスから問いかけられたわたしたちの答えにもなりうると感じられるでしょう。
 イエスは「来なさい。そうすれば分かる」 (別訳では「来て、見なさい」)と言います。これもわたしたちに向けられた招きの言葉として受け取ることができるでしょう。

  (5) 福音書は直接イエスに出会った人たちが書いたものではなく、イエスに出会った人々の思い出が人から人へと語り継がれ、最終的に今の形で書き記されたと考えられます。ヨハネ福音書を最終的に書いたのも使徒ヨハネではないと考えられていますが、著者が使徒ヨハネから伝えられた古い伝承を用いていると考えることはできるでしょう。この箇所も、使徒ヨハネ自身のイエスとの最初の出会いの記憶に基づいているのでしょうか。
 「午後四時ごろのことである」という言葉は「その日は、イエスのもとに泊まった」の理由だと考えることもできますが、それだけでなく、夕方に近い午後の日差しの中でイエスと初めて出会った、その強烈な印象と感動を伝えている言葉なのかもしれません。それは何十年経っても昨日のことのように思い出せる印象的な出会いの時だったのでしょう。
わたしたちにとっての「午後四時」と言えるような体験があるでしょうか。




ダウンロードできます
「福音のヒント(PDF)」
※集い用に、A4サイズ2ページで印刷できます。




聖書朗読箇所

第一朗読 サムエル上3・3b-10、19


 3b〔その日、少年〕サムエルは神の箱が安置された主の神殿に寝ていた。4主はサムエルを呼ばれた。サムエルは、「ここにいます」と答えて、5エリのもとに走って行き、「お呼びになったので参りました」と言った。しかし、エリが、「わたしは呼んでいない。戻っておやすみ」と言ったので、サムエルは戻って寝た。
 6主は再びサムエルを呼ばれた。サムエルは起きてエリのもとに行き、「お呼びになったので参りました」と言った。エリは、「わたしは呼んでいない。わが子よ、戻っておやすみ」と言った。7サムエルはまだ主を知らなかったし、主の言葉はまだ彼に示されていなかった。8主は三度サムエルを呼ばれた。サムエルは起きてエリのもとに行き、「お呼びになったので参りました」と言った。エリは、少年を呼ばれたのは主であると悟り、9サムエルに言った。「戻って寝なさい。もしまた呼びかけられたら、『主よ、お話しください。僕は聞いております』と言いなさい。」サムエルは戻って元の場所に寝た。10主は来てそこに立たれ、これまでと同じように、サムエルを呼ばれた。「サムエルよ。」サムエルは答えた。「どうぞお話しください。僕は聞いております。」
 19サムエルは成長していった。主は彼と共におられ、その言葉は一つたりとも地に落ちることはなかった。


第二朗読 一コリント6・13c-15a、17-20


 13c〔皆さん、〕体はみだらな行いのためではなく、主のためにあり、主は体のためにおられるのです。14神は、主を復活させ、また、その力によってわたしたちをも復活させてくださいます。15aあなたがたは、自分の体がキリストの体の一部だとは知らないのか。17しかし、主に結び付く者は主と一つの霊となるのです。18みだらな行いを避けなさい。人が犯す罪はすべて体の外にあります。しかし、みだらな行いをする者は、自分の体に対して罪を犯しているのです。19知らないのですか。あなたがたの体は、神からいただいた聖霊が宿ってくださる神殿であり、あなたがたはもはや自分自身のものではないのです。20あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。だから、自分の体で神の栄光を現しなさい。


福音朗読 ヨハネ1・35-42


 35〔そのとき、〕ヨハネは二人の弟子と一緒にいた。36そして、歩いておられるイエスを見つめて、「見よ、神の小羊だ」と言った。37二人の弟子はそれを聞いて、イエスに従った。38イエスは振り返り、彼らが従って来るのを見て、「何を求めているのか」と言われた。彼らが、「ラビ――『先生』という意味――どこに泊まっておられるのですか」と言うと、39イエスは、「来なさい。そうすれば分かる」と言われた。そこで、彼らはついて行って、どこにイエスが泊まっておられるかを見た。そしてその日は、イエスのもとに泊まった。午後四時ごろのことである。40ヨハネの言葉を聞いて、イエスに従った二人のうちの一人は、シモン・ペトロの兄弟アンデレであった。41彼は、まず自分の兄弟シモンに会って、「わたしたちはメシア――『油を注がれた者』という意味――に出会った」と言った。42そして、シモンをイエスのところに連れて行った。イエスは彼を見つめて、「あなたはヨハネの子シモンであるが、ケファ――『岩』という意味――と呼ぶことにする」と言われた。

Posted on 2021/01/08 Fri. 08:30 [edit]

category: 2021年(主日B年)

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