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福音のヒント

主日のミサの福音を分かち合うために

四旬節第5主日 (2022/4/3 ヨハネ8章1-11節)  


教会暦と聖書の流れ


 C年四旬節第3~5主日のミサの福音には、「回心と罪のゆるし」というテーマで朗読箇所が選ばれているようです。きょうの箇所も「ゆるし」に関する有名な箇所です。
 新共同訳聖書は、ヨハネ福音書のこの箇所をカッコの中に入れています。古代の重要ないくつかの写本の間に大きな食い違いがあって、後の時代の人が本来のヨハネ福音書に書き加えた箇所だと考えられるからです。しかし、この物語のイエスは、イエス以外の誰にもできないような大胆なゆるしの宣言をしていますから、この物語が実際に起こった出来事に基づいていることは疑いようがありません。


福音のヒント


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  (1) この箇所が後の時代の挿入だとすれば、他の福音書には伝えられていないこの物語は、この物語だけで独立して伝えられて来て、ある時ここに挿入されたのでしょうか。
 そうではなく、本来はルカ福音書の中にあったものが、早い時期に省かれてしまい、その後ヨハネのこの箇所に挿入された、という可能性もあります。ルカ21章の終わりにはこういう言葉があります。「それからイエスは、日中は神殿の境内で教え、夜は出て行って『オリーブ畑』と呼ばれる山で過ごされた。民衆は皆、話を聞こうとして、神殿の境内にいるイエスのもとに朝早くから集まって来た」(37-38節)。この言葉はきょうの福音の冒頭「イエスはオリーブ山へ行かれた。朝早く、再び神殿の境内に入られると、民衆が皆、御自分のところにやって来たので、座って教え始められた」(ヨハネ8章1-2節)とよく似ています。きょうの箇所は、もともとルカ21章の終わりにあったと想像してみてもよさそうです。
 初代教会では、姦通は特別に大きな罪と考えられていました。ですから、姦通の罪を犯した女性をゆるしたイエスの物語は、スキャンダルになったのではないでしょうか。姦通の罪を犯した人をゆるせば教会の秩序が崩壊してしまうという理由のために、ルカ福音書から省かれてしまったのかもしれません。なお、ヨハネ福音書のこの箇所に置かれた理由は、直後のヨハネ8章15節にある「あなたたちは肉に従って裁くが、わたしはだれをも裁かない」という言葉につながると考えられたからでしょう。

  (2)  古代イスラエルにおいて「姦通」とは、男性が他人の妻(または婚約者)と性的関係を結ぶことでした。逆の場合、つまり、既婚の男性が自分の妻以外の独身の女性と関係することは「姦通」ではありませんでした(これが姦通とされるのは、キリスト教になってからのことです。マルコ10章11-12節参照)。律法は姦通を厳しく禁じていました。たとえば、レビ記20章10節。「人の妻と姦淫する者、すなわち隣人の妻と姦淫する者は姦淫した男も女も共に必ず死刑に処せられる」(なお、「姦淫」は不道徳な性行為全般を指す言葉ですので、「姦通」も行為としては「姦淫」の一部ということになります)。
 もちろん、男も女も同罪ですが、今日の福音の物語では女性だけが捕らえられています。男は逃げてしまったのでしょうか?あるいは男のほうは見逃されたのでしょうか?男女同罪のはずなのに、社会は昔から男性よりも女性のほうに厳しかったようです。

  (3) いずれにせよ、イエスがもしこの女をゆるせば、律法を無視したことになり、「石で打ち殺せ」と言えば、神のゆるしを告げてきたイエスの生き方とメッセージに反することになります。どう答えてもイエスは窮地に追い込まれることになるのです。
 人々はこの女性とイエスを取り囲んでいます。彼女は姦通の罪を犯したことで人々の裁きの前に立っていますが、イエスもこの女性をどう扱うか、ということで、人々に裁かれる側に立たされていると言えるでしょう。なお、このときイエスが地面に何を書いていたか、いろいろな想像がありますが、どれも想像の域を出ません。ただ、かがみこんでいるイエスの姿は印象的で、どこか弱々しく感じられるのではないでしょうか。
 人々は裁く側、イエスとこの女性は裁かれる側。この構図を一変させたのは、7節のイエスの言葉でした。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」。この一言によって、そこにいたすべての人は神の裁きの前に立たされます。そして、自分が神の前で罪びとであることを認めざるをえなくなるのです。

  (4) 人々は去っていき、イエスとその女性だけが残りました。「わたしもあなたを罪に定めない」とイエスは言います。「罪に定めない」というのは、その人の行為を良しとすることではありません。あなたの罪にもかかわらず、わたしはあなたの死を望まない、あなたが生きることを望んでいるということです。彼女は自分が神の裁きの前というよりも、もっと大きな神の愛とゆるしの前に立っていることに気づいたはずです。
 きょうの福音がわたしたちに問いかけていることはなんでしょうか。1つには「わたしたちは皆、神の前に罪びとである」ということを本気で受け取ることができるかどうか、ということでしょう。人を裁く前に、自分も罪びとであり、その自分が神のあわれみによって生かされている、と感じること。そこから自分以外の罪びとに対してどう関わるかが問われてくるのです。罪びとを、社会を害する迷惑な存在であり、抹殺すべき対象と見るか、自分と同じように弱い兄弟姉妹であり、立ち直って生きることを願うか・・・。
 もう1つはこの女性のように、ゆるされたことの重み(=はかりしれない恵みの大きさ)を本気で受け取れるかどうか、ということでしょう。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない」というイエスの言葉は、「まあなかったことにして、見逃してあげよう」というような言葉ではありません。「ゆるしを受けた者として、まったく新たな生き方を始めていきなさい」ということなのです。




ダウンロードできます
「福音のヒント(PDF)」
 ※集い用に、A4サイズ2ページで印刷できます。


聖書朗読箇所

第一朗読 イザヤ43・16-21


16主はこう言われる。
海の中に道を通し
恐るべき水の中に通路を開かれた方
17戦車や馬、強大な軍隊を共に引き出し
彼らを倒して再び立つことを許さず
灯心のように消え去らせた方。
18初めからのことを思い出すな。
昔のことを思いめぐらすな。
19見よ、新しいことをわたしは行う。
今や、それは芽生えている。
あなたたちはそれを悟らないのか。
わたしは荒れ野に道を敷き
砂漠に大河を流れさせる。
20野の獣、山犬や駝鳥もわたしをあがめる。
荒れ野に水を、砂漠に大河を流れさせ
わたしの選んだ民に水を飲ませるからだ。
21わたしはこの民をわたしのために造った。
彼らはわたしの栄誉を語らねばならない。


第二朗読 フィリピ3・8-14


 8〔皆さん、わたしは、〕わたしの主キリスト・イエスを知ることのあまりのすばらしさに、今では他の一切を損失とみています。キリストのゆえに、わたしはすべてを失いましたが、それらを塵あくたと見なしています。キリストを得、9キリストの内にいる者と認められるためです。わたしには、律法から生じる自分の義ではなく、キリストへの信仰による義、信仰に基づいて神から与えられる義があります。10わたしは、キリストとその復活の力とを知り、その苦しみにあずかって、その死の姿にあやかりながら、11何とかして死者の中からの復活に達したいのです。
 12わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません。何とかして捕らえようと努めているのです。自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。13兄弟たち、わたし自身は既に捕らえたとは思っていません。なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けつつ、14神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです。


福音朗読 ヨハネ8・1-11


 1〔そのとき、〕イエスはオリーブ山へ行かれた。2朝早く、再び神殿の境内に入られると、民衆が皆、御自分のところにやって来たので、座って教え始められた。3そこへ、律法学者たちやファリサイ派の人々が、姦通の現場で捕らえられた女を連れて来て、真ん中に立たせ、4イエスに言った。「先生、この女は姦通をしているときに捕まりました。5こういう女は石で打ち殺せと、モーセは律法の中で命じています。ところで、あなたはどうお考えになりますか。」6イエスを試して、訴える口実を得るために、こう言ったのである。イエスはかがみ込み、指で地面に何か書き始められた。7しかし、彼らがしつこく問い続けるので、イエスは身を起こして言われた。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」8そしてまた、身をかがめて地面に書き続けられた。9これを聞いた者は、年長者から始まって、一人また一人と、立ち去ってしまい、イエスひとりと、真ん中にいた女が残った。10イエスは、身を起こして言われた。「婦人よ、あの人たちはどこにいるのか。だれもあなたを罪に定めなかったのか。」11女が、「主よ、だれも」と言うと、イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。これからは、もう罪を犯してはならない。」

Posted on 2022/03/25 Fri. 08:30 [edit]

category: 2022年(主日C年)

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